1 仕事は増える一方で減ることはない
パーキンソンの法則というものがあります。英国の歴史学者であり政治学者でもあったシリル・ノースコート・パーキンソンが、英国の官僚制を幅広く観察した結果から導き出した法則です。
2つの法則から構成されています。
<第1法則>
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。<第2法則>
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。
自分自身企画を考えているとき、資料集めやアイデア出しをおこない、「あーでみない、こーでもない」とぐちぐち考えていて、結果〆切という時間が踏ん切りをつけてくれるなんていうことはよく経験します。
仕事は3つに分類できると思います。
- やらなくてはならない仕事
- やったほうがよりいいが、やらなくても大きな影響はない仕事
- 意味が見出しにくい仕事
人間は仕事を作る習性があるようで、そのときにはたいてい、2の「やったほうがよりいいが、やらなくても大きな影響はない仕事」をつくっています。
管理職研修を行うときに、「管理者不在の組織では何が起こるか?」ということをフリートーキングで考えてもらうことがあります。そこであがってくる意見は
- 時間を管理しないと、労働問題に発展するリスクもあるし、お客様に迷惑をかけてしまう
- プロセスを管理しないとチェックが働かずミスがおこりやすいし、不正の温床にもなる
- コストを管理しないと不要な間接経費がふえていくことになる
- 人材を管理しないと、自己流の仕事をおぼえてしまい、チームで仕事ができない
などなど、みなさん管理者がいない組織が引き起こす不都合は十分認識しています。
ただ、現在、ほとんどの管理職はプレイイングマネージャーであるというのも事実です。こうなると管理者にもプレイヤーとしてのノルマがあるわけですから、管理者の仕事をほとんど顧みずプレイヤーに専念してしまいます。あるいは思い切り残業しながら管理者の仕事もこなしていこうとします。
いずれにしても正常な状態ではありません。
そもそも、プレイヤーとして時間いっぱい仕事をしていてほぼ100%の時間を使っていたわけですから、そこに新たな管理業務という仕事がはいってくればあふれるに決まっています。じゃぁ、一部のプレイヤー業務を部下に移譲できるかといえば部下も手一杯の状況。仕方なしに自分でやってしまうという悪循環。
結局仕事の見直しを行うことが必要となるのですが、それを個人に任せるのはあまりに酷な話だと思うのです。
2 仕事の見直しを行うための5ステップ
今やっている仕事のうち何を削減するのかを見極めること。現状の仕事の流れで大事な抜けやモレがないかを確認することが大切です。そのためには以下の5つのステップで進めていくことが望ましいと思います。これを組織で実行していくことが必要です。
- 現状の仕事を洗い出す。
- 仕事をマッピングする。
- 対応を考え決定する。
- 自分の仕事スケジュールを策定する。
- 実施し、検証をする。
1 現状の仕事を洗い出す
週間単位でも、月間単位でも構いません。自分が今週(今月)行った仕事を手帳等に記録して洗い出してください。その際に、1 どういう仕事をしたのか。2 どれくらいの時間をかけたのか。3 その仕事の目的を記録しておいてください。そして、下記の表のようにまとめてみましょう。時間はだいたいの時間で構いません。
日付 | 行った仕事 | かけた時間 | その仕事の目的 |
|
農水省等道の駅に関する |
1時間 | 道の駅向け 新型POSレジ 資料作成のため |
印刷会社打合せ | 30分 | 販促資料見積り依頼 | |
出張業務精算入力 | 15分 | 出張費精算 |
2 仕事をマッピングする
洗い出した仕事を下記のマトリックスに貼りつけていきましょう。「緊急性」というのは「〆切が決まっている」という程度の意味合いで考えてください。
Aに入る仕事
本来の仕事です。通常は仕事のスタートからゴール(終了)までがあるはずです。本来の仕事の業務フローを作るとともに、それぞれの業務にかける時間を実績値をもとに記入しておきましょう。
Bに入る仕事
次への仕込みの仕事です。本来はこの部分の仕事をキチンと管理することが仕事の生産性につながるのですが、私のコンサルや研修の経験からいえば、個々の仕事を入れてキチンとこなしている人は少数派です。組織として、次の仕込みの仕事は何なのかを考え、共有することが大切です。
Cに入る仕事
問合せ・突然の来訪・クレーム処理など対応せざるをえない案件をリストアップし、どのように対応していったかを記入しておきます。
Dに入る仕事
生産性に結びつかないと思われる仕事、時間のかけすぎと思われる仕事をリストアップしていきます。当然のことながら「まずはここの仕事をどうするか」が検討材料となります。
3 対応を考え、決定する
1 4象限の時間の配分をみてみる。
週でも月でも構いませんが、AからDにかけた時間を週あたり法定時間(つきあたり法定時間)で割ってみます。それぞれ何%くらい仕事が割り振られているかの現状を把握しましょう。
2 ムダを洗い出す(C領域・D領域の整理)
研修を行っていて「みなさんが考えるムダと思う時間は何ですが?」と尋ねると、圧倒的に多いのが「会議および会議のために作る資料」といった答えが圧倒的に多いです。「ほんとうにそうなのか」と。鵜呑みにできない部分もありますが、たしかに開始時間・終了時間が守られない会議などはどこかで他人の時間を泥棒している可能性が大です。
また、文具メーカーのコクヨの調査では「一般的な企業人が『ものを探している時間』は年間150時間」というデータもあります。整理整頓不足でモノを探す時間はやはりムダです。このように、モノを探す時間、移動時間、不要な会議、複数の同様の書類、その他ダブっているもののチェック、自部門・自身の本来業務に関連が薄い業務などの削減をまずは検討しましょう。また、C領域の対応においても、「すぐに確実に行うべきもの」や「あとで一括で対処するもの」など対応レベルを決めておき、組織が承認していることが大切です。
3 過剰に時間がかかっている、過剰に丁寧に仕事をしている部分はないか
C・D領域の仕事の削減でおさまればいいのですが、なかなかそれだけでは終わらない場合があります。次に考えるべきはAからの領域の効率化でです。まずは、過剰に時間がかかっている仕事や過剰に丁寧に仕事をしている点はないかを検討してみます。たとえば、チラシの校正などを考えた場合、1人で構成するよりも2人、3人と数を増やしたほうがいいに決まっています。ただ、そこまでの時間やコストをかけるべきなのかという判断は必要になってきます。また、場合によっては外注化や自動化といった取り組みも必要となってきます。
削減する仕事、昔は意味を持っていたが、現在はあまり関係なくなった仕事など、さがしていくと結構見つかるものです。また、そうやって探していくことが、現在自分がしている仕事の意味付けにもつながっていきます。
4 自分のスケジュールを策定する
現在の仕事で削減するもの、軽減するものを決めたら、Aの領域の仕事は業務フローと標準工期を決めておくといいでしょう。つまり、どういう手順で仕事をし、それぞれの工程にどれくらいの時間をかけるのかということをあらかじめ決めておきましょう。
スケジュールを埋める場合は以下の手順で行います。
- あらかじめ休みの日を消し込む。
- すでに予定が入っているものを使用時間も含めてスケジュール表に書き込む。
- 自分の業務を書き込む、この場合たとえば「報告書チェック」など、1日のうちでいつやっても良い仕事も一応何時から何時までと、時間を決めておき記入する。
- 1日8時間の業務であるなら、だいたい5から6時間程度を1日の仕事時間の上限としておく。
- 4のスケジュール通常の業務フローが〆切どおりに回るかどうかを確認しておく。
5 実施し、検証する
スケージュルに実績を書きくわえできたかどうかのチェック。できなかった場合どういう阻害要因があったのかを確認しPDCAをまわしていきます。
3 仕事とコストの関係
一般的には企業の場合、人件費の2から3倍のコストがかかると言われています。これは家賃・光熱費・教育費など間接経費が一人ひとりに按分されて振りつくからです。
乱暴なようですが会社の人件費の時間単価をだしてみることも、仕事のやる・やらないを決める手段となります。たとえば時間単価7,000円の社員が6人集まり2時間の会議をすれば84,000円の時間コストがかかっているわけです。それであけのコストをかけて結論のでない会議、何も意見が出ない会議を行う必要があるのか?
時間あたりのコストをだすことで、仕事の必要でをはかる「ものさし」ができると思います。
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