自社内で研修を行うことは、むちゃくちゃ有効な人材育成の手段だと思う。

1 外部研修と内部研修のメリットデメリット

先日、ある企業の方から「新人研修などで毎年やる研修は内製化できないものか?」という質問を受けました。
もちろん、できますし、積極的に取り組むべきだと私は思うのです。
ここで、まず外部で行う研修と内部で行う研修のメリット・デメリットについて考えたいと思います。

それぞれのメリット・デメリット

外部研修・内部研修の比較

  外部研修 内部研修
コスト 毎回コストがかかる 最初は一定のコストがかかるが、それ以降は大幅に軽減される
コンテンツ 最大公約数はまとめられるが、企業の個別個別の内容に踏み込むことは難しい 自社の個別の事情を反映することはできるが、正しい前提にもとづいているか、個人の主観にもとづかないか、抜けや漏れがないかは疑問符が付く
運営(研修前) 講師手配、テキスト作成、目的に応じたカリキュラム設定など、外部の研修会社が一括して請け負う 社内講師の手配やテキスト作成、最適カリキュラムなど最初は労力が伴う
運営(研修中) ・社内の人間関係に配慮することなく進行することができる
・時間配分・板書・パワーポイントなどは一日の長がある
・社内講師の場合、社内の人間関係などが影響る場合もある
・我流だと時間配分などで苦労することもある
運営(研修後) 通常は研修の終了で契約が終了することが多く、研修で学んだことの定着は別途コンサルティング料などのコストが発生する 研修で学んだことの定着は社内で行うことも可能。ただし、そこで発生する諸々の問題解決には一定のノウハウも必要
その他 一過性の研修では評価しにくい 計画的に研修できれば評価にむすびつきやすい

教科書的に言えば「外部研修・内部研修ともにメリット・デメリットがあるので、目的によって使い分けましょう」ということになるのですが、また、実際にその通りでもありますが、私は積極的に社内研修を進めるべきだと思います。

その理由は以下の2点に尽きます。

  1. 教える人間が最も学び、成長するということ
  2. テキストに社内ノウハウが体系的に整理できるということ

よく、社内研修の話をすると「コスト」がまず話題にのぼります。たしかにその視点も大事なのですが、人材育成の観点でいえば上記2つが圧倒的な理由となるのではないかと思います。

教える人間が最も学び成長するということ

「作業の流れを時系列に分類する」「教えるべき項目を大項目中項目小項目などのカテゴライズする」「専門用語をわかりやすい言葉に翻訳する」などなど、人に教えて理解してもらうためにはこれらの作業を行うことになります。
教えるテーマ(通常は教える本人と関係あるテーマ)をこのような観点で分解・分類し、そして話すという作業は学びにつながります。

資格試験にチャレンジしたことがある人ならお分かりかもしれませんが、初めて見る難解な内容を流れや関係性で分類・体系化でき、かつ、自分の言葉で話すことができて初めて「理解できた」と言えるのです。

このことは社内講師を育成するということにとどまらず、社内のコミュニケーションの強化やお客様との関係性強化にもつながると思うのです。

テキストに社内ノウハウが体系化できるということ

よく「暗黙知を形式知に」といいますが、実際に企業に行くと文字通り「ふわっと決まっている」事項がいかに多いことか。
新人でも中途採用でも結構です。教わる身になって考えてみましょう。
初めての勝手のわからない職場で、「何をすればよいかわからない」焦燥感、「十分にフォローが受けられない」孤独感、「結果だけで評価される」違和感。
それでも以前はそれを繰り返し、「見て覚えろ」形式の教育でも通用しましたが、人口減少で働き手が不足する社会で、こういう職場はやはり淘汰されるのではないでしょうか。

社内研修を立ち上げるのならば、「若手に知識を教える」ばかりでなく、ぜひ社内ノウハウの体系化といった観点でも検討していただきたいと思います。

2 社内研修で何を伝えるのか

社内でしか伝えられらないことを挙げると以下の4つではないかと思います。

  1. 会社の想い・歴史
  2. 会社のルール・コンプライアンス
  3. 会社の情報からの計画力・実践力
  4. 会社の技術・ノウハウ

1 会社の想い・歴史

企業に行くと、会社の歴史に、現在の企業活動の根本をみたり、会社の根本的な強みを見るときがあります。一方で、古参社員は理解していても、若手社員にはその強みが曲解されていたりすることもあります。
また、当然ながら「会社はどういう方向を向いているのか、今後会社が得ようとしてるものは何なのか」については、内部で繰り返し教育する必要があると思います。
ずいぶん古い話になりますが、私が勤務していた福武書店(現ベネッセコーポレーション)でも入社時に創業者の福武哲彦氏の考え方を繰り返し聞かされました。
ふりかえると、それが会社のDNAとなって自分の体に染み付いたような気もします。

古い・新しいではなく、バーナードが言う組織成立の3要素「共通目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」はこういうところから醸成されると思いますし、これは現在でも強い組織の必要条件だと思います。

2 会社のルール・コンプライアンス

旅費交通費の精算とか就業規定といった明文化されたルールから、コンプライアンス規定など100%明文化することが難しいルールなど、社内で教えるべきルールはたくさんあります。それにくわえて、自社の存在意義からスタートした「行動規範」なども、外部では伝えることが難しいテーマです。
会社に帰属している社員にとって「とるべき行動」「とってはいけない行動」は伝えるべき内容だと思います。
売上があがればどういう戦略でも採用すべきなのか、どういう行動も許容されるのか。
すぐに答えが出る問題ではありませんが、会社の考えは示すべきだと思います。

3 会社の情報からの計画力・実践力

例えば「PDCAの回し方」「マーケティングの基本的な考え方」といったことは外部研修でも十分に可能ですが、その基礎知識を自社の情報とリンクさせて、考え、計画し、実践していくとなると研修ではなく、コンサルティングとなり、コストも大きくなるのが一般的です。
では、内部では無理なのかというというと、そんなことはなく、これらのことは当然会社では行っておくべきことなのです。
ただ、最初のやり方、考え方、目標の設定のしかた等は内部講師を活用し理解してもらい、実施後の確認などは、各担当部署で行うことにすれば、社内的にもPDCAが回る仕組みにつながると思います。

4 社内の技術・ノウハウ

技術者の高齢化に伴う「技術の伝承」、成績上位者の「コンピテンシー」など以前から言われてきたことです。社内には当たり前になっているノウハウもたくさんあります。これらは財務諸表に計上されませんが「資産」です。
これらは外部研修ではなかなか行うことができません。
手順をマニュアル化できる作業もありますし、マニュアルだけでは伝えきれないノウハウもあると思います。
まずは、目的、該当ノウハウ・技術の必要性、手順、ポイントなどをテキスト化しておくだけで、会社の全員が振り返ることができ「ものさし」ができると思うのです。

3 社内研修を成功させる3条件

社内研修を行っている企業からも「面倒だ」「マンネリでつづかない」といった声も聞かれます。私なりに思うことは社内研修の導入にあたり、成功のために3つの条件があると思います。

  1. トップの関与
  2. プロジェクトの編成
  3. 外部人材の活用

1 トップの関与

私がお会いする企業は中小・小規模企業がほとんどです。
今回のような社内研修を立ち上げる際には、トップの関与が不可欠だと思います。何も、細かなことをトップ自らする必要はありません。ただ、「会社として本気でやるぞ」という姿勢が、社員に理解されることが必要なのです。
社内研修は意義は高いと思うのですが、立ち上げまでには結構なハードルが存在します。会社の支援なしに担当者任せにすると、どの部署からも協力が得られず、結局担当者が疲弊し、「やめたって誰からも文句を言われないや」と考えるようになり、結果、掛け声で終わり。なんということはよくあることです。

ここは単に「研修」と考えるのではなく、会社の人材育成とノウハウ統合の「社内強靭化計画」であると考えていただきたいと思います。

2 プロジェクトの立ち上げ

社内研修を行う場合、いろいろな部署に協力を仰ぐ必要があります。大企業はいざ知らず中小企業では、研修担当部署が全くないか、兼務されているなどというケースはたくさんあります。担当者だけでは、どうしても限界があります。立ち上げ時には複数の部署からメンバーを選出してもらい、基本の設計→講師の選定→実施までのフォローなどを行ってもらう必要があります。
プロジェクトリーダーは研修担当者でもよいのですが、総責任者は会社のトップが就き、プロジェクトからの報告を義務化するなど、トップの関与をはっきりさせることも必要です。

3 外部人材の活用

かならず外部人材が必要かといえば、そんなことはないのですが、やはり最初はカリキュラムをどう考えるか、テキストをどのように構成するか、どのような講義展開を行うかなどは、経験者と一緒になって議論し、考えたほうが効率よくプロジェクトが立ち上がると思います。
ここで大事なことは「一緒になって考えるということ」
多分、世の中にはきれいな仕組みを作ってくれるところはたくさんあると思います。
当たり前ですが、それはほぼ使えない。

私の20年間の研修講師とコンサルティングの結論ですが、
「どんなに不細工でも、不十分でも自分たちがかかわった時間だけ、それは残る」

目的は人材育成とノウハウの一元化です。
多分2回自分たちで回せば定着すると思います。

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