ARCSモデルから考える研修のゴール

1 人間のモチベーション

昔、ある本で読んだことがあるのですが、ナチスドイツの拷問でこんなものがあったそうです。
まず、囚人に穴掘りを命じます。囚人は命じられた大きさ、深さの穴を掘り、看守に仕事が終わったことを報告に行きます。すると、看守はその穴を埋めることを命じます。また完了の報告をすると、再度穴を掘る事を命じる。こんなことをひと月も繰り返すと、だいたい囚人の精神に変調をきたすとのこと。
昔のおぼろげな記憶なので間違っていたらご容赦を。
この例で言えることは、「人間、自分の行為に何の価値も見いだせないと精神に変調をきたすくらい落ち込んでしまうということ」です。

2 ARCSモデルとは

で、ARCSモデルの話なのですが、みなさんご存知ですか?
これはフロリダ州立大学のジョン・ケラー教授が提唱した「学習の動機づけ」モデルです。

Attention(注意) 学習者の注意を喚起する。「面白そうだ」と思わせるテーマ設定等が必要。
Relevance(関連性) 自分の仕事との関連性を理解してもらい、やりがいを感じてもらう。
Confidence(自信) 設定した目標などに「やればできそうだ」という自信を持ってもらう。
Satisfaction(満足感) 自分の行動を評価され、「やってよかった」と感じてもらう。

上の4つのキーワードの頭文字をとってARCSモデルなのですが、研修に送り出す会社の姿勢として大事だと思うのは最後の「満足感」の部分。
わりと研修に社員を送りっぱなしで、その後のフォローをしていない会社も多いのではと思うのが実感です。

しかし、これでは、「研修に出席した」という行為が、穴掘りの囚人のように、自分の行為に価値が見いだせないことになりはしないでしょうか。
やはり、研修で学んだことを発表してもらい、仕事にどう活かすかを提案してもらう。この時も発表させっぱなしではなく、やはり褒める・励ますということが必要ですね。

人間のモチベーションをいちばん下げるのは「無評価」ということ。
「無評価」ということは「あなたのやっていることは何の評価にも値しないものです」と言っていることになります。

積極的にそんな行動を取る人は殆どいないと思いますが、何のフォローもしないということは、結果として本人には「無評価」ということと同じになります。

研修講師として思うことは、もちろん全力で受講生の方に対して伝えていきます。
ただ、それが身になるためには、「会社のフォローも同様に必要だ」ということをお伝えしたかったのです。

 

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