PDCA:計画は行動に結びついて完了する

1 「おはようおじさん」のこと

中小企業大学校広島校で経営管理者養成コースのゼミを担当していた時の話です。
このゼミというのは、各人が会社の問題を持ち寄り、5ヶ月間で課題の設定をし、実行項目を策定して行くというものです。講師は、それぞれの受講生の話を聴きながら、意見を付加したり、改善案をアドバイスをしたりいたします。
広島校では、1年後、希望者が集まり、計画を実践した成果を発表する会を催しています。
3年前の発表会のときでした。
その方は私のゼミの方ではなかったのですが、広島県内の中堅企業の人事部の方でした。
その方のテーマは「風通しのよい組織づくり」というようなテーマだったと思います。
「どうもうちの会社はコミュニケーションがわるい。挨拶の励行を唱和しているがなかなか社内で定着しない。そこで、自分自身が『おはようおじさん』になって、毎朝会社の門の前に立ち、社員のみならず、地域の住民の方にも朝の挨拶を行っていく」
彼の実行計画は上記のようなものでした。まぁ、シンプルと言えばシンプルな計画です。

で、1年後。
結果発表の席で、彼は発表しました。
律儀な方のようで、実施した回数や地域の方が返事を返してくれた回数などもカウントしてあり、グラフ化されていました。出張や二日酔いもあり、実施率は80%くらいだったとのこと。(それでも立派だと思いますが)雨の日は辛かったことなど…。

面白かったのは、地域の方の反応でした。3ヶ月めまでは、全く無視。彼が「おはようございます」といっても、挨拶を返す人はいません。それどころか怪訝そうな顔をされることもしばしばだったとか。
変化が起こるのは3ヶ月めから。徐々に住民の方も挨拶を返してくれるようになり、半年後には80%以上の方が挨拶を返してくれるようになったみたいです。
ある大雨のときなど、わざわざ「あんた今日はやめときんさい」と声をかけてくれる方もあったようで。

彼の行動が地域で認知され、名物化されたあと、彼は会社の役員会に呼ばれ、事の経緯を説明したとのこと。
役員会からは、この運動をぜひ全社的に広めるよう担当に任命され、今では会社をあげて、朝の挨拶を行っているそうです。

ここから得られる教訓は2つ。
1つは、小さな行動が組織を動かす運動に変化する可能性を秘めているということ。
2つめは、人が認知するためには3ヶ月程度時間は必要だということ。

2 MORSの法則で考えてみる

「おはようおじさん」の例からもわかるとおり、計画は行動に結びついて意味をなすものであり、行動に結びついてこそ、その後の検証を行うことができるのです。
問題解決のための計画づくりや事業計画づくりのお手伝いをすることは多いです。
計画の必要性や方針づくりまではよいのですが、具体的な行動になるとトーンダウンというか、綺麗・曖昧な言葉で誤魔化してしまうのが通例です。
そんなときに、「具体的に何をやるのですか」という質問を繰り返しながら、行動へとブレークダウンしていきます。

「なかなか部下の計画が行動に結びついていない」とお考えでしたら、MORSの法則で切り口を考えてみてはいかがでしょうか。
■MORSの法則■

Mesurable  測定が可能であること。数値化または結果の特定でできたかどうかの判断が可能であること。
Observable  観察が可能であること。外部からチェックが可能であること。
 Reliable  信頼できること。誰が見ても同じ行動だと認識できること。
 Specific  明確化されていること。期日・担当・やるべきことが明確されていること

研修を行っていて、まず最初に出てくる行動目標は「顧客の満足度をあげる」などの大きな括りの言葉です。
「あなたにとって顧客の満足度をあげるためにはどういうことが必要ですか?」や「お客様は何を望んでいると思いますか?」など質問をしながら、「そのために何をするコトが必要なのか」といった具体的な行動に結びつけていきます。
きれいな言葉などいらないのです。
「おはようおじさん」がやっったような具体的な言葉が必要です。でなければ結局お題目に終わって行動しません。
結果、組織も自分自身も変化しないと思います。

特に若手社員に目標を設定してもらう際に、上記のMORSの法則を利用してチェックしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに私はいま中小企業大学校広島校から、直方校に移りました。
こちらは1年後のふりかえりはないのですが、経営管理者養成コースでゼミを担当しています。
ご興味があればリンクを覗いてみてください。

 

 

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