目次
1 訴求されるべきところが訴求されていてない!
以前、こんな相談を受けたことがありました。
「整体のお店をオープンしたが、もくろんでいたWebからの集客がほとんどない。経営が苦しいのだが、どうしたものか」ということでした。その方のお話を聞くと整体のなかでも、ある分野での専門性があり、以前勤めていた病院では交通事故でのムチウチのリハビリなどを主に担当していたということでした。
で、ホームページを見てみると、そんな記述はどこにもない。
アロマの香りがどうとか、女性を意識したようなイメージ的な記述ばかりでした。
この方の専門性を活かし、ホームページを見に来た人の問題を解決しようとすれば、当然ながらムチウチで悩む方に当診療院は何ができるか、どういう問題を解決できるのかを訴求していくべきでしょう。
一般にホームページを検索している人は何らかの目的があるはずです。この場合で行けばムチウチの後遺症で悩む人がいれば、「ムチウチ」というキーワードで検索し、自分の目的にかなう情報が載っていれば、行動へと結びつきます。
ここまで極端でなくても、本来会社で訴求すべき項目と実際にホームページに記載されている記事との不一致はよく見受けられます。企業に出かけてヒアリングをしていると、そもそも何を訴求すればよいかがわかっていない例が、想像以上に多いものです。
2 訴求ポイントを探す3つのチェック項目
企業を訪問していて「うちにはこれという売り物がなくて」と言われたことは1度や2度ではありません。
でも社歴を見ると創業20年、30年だったりして。それだけの歴史を持つ企業が「売り物がない」わけがありません。
そういうときに私はヒアリングで3つのポイントを聞くようにしています。
- そもそもどういう「想い」でこの会社または商品を作ったのか?
- お客様からよく依頼されること(値引き以外)はなんですか?
- アンケートや営業パーソンがお客様から感謝される言葉なんですか?
1 そもそもどういう「想い」でこの会社または商品を作ったのか?
こんな例がありました。
ある企業がPOSシステムを開発いたしました。クラウドシステムを活用しているので少し価格が安いというのがウリでした。本来、「価格が少し安い」は訴求ポイントになりえません。なぜなら、いちばん真似されやすいからです。
最初に「この商品の訴求ポイントは?」と質問して、「価格が安い」という回答があったとき、少し頭を抱えました。
こういうときは、「そもそもなぜこの商品を作ろうと思ったか」という動機を聞くようにしています。
そこに会社や経営者の本音が現れることが多いからです。
そこで、「そもそもなぜこの商品を開発しようと思ったのですか」と尋ねてみました。
するとその商品はもともとは「道の駅」に向けて作った商品だったことが判明しました。道の駅は農家の方が朝、商品を持ってきて、夕方に売上と売れ残った商品を引き上げていくという「委託仕入れ」という仕入れ形態で、そのPOSシステムは「委託仕入れ」が管理できるPOSシステムでした。確かに、「委託仕入れ」が発生する売場は、通常の仕入れ形態の売場よりも少ないかもしれません。しかし、だからこそ大手メーカーは参入しにくく、中小企業としては比較的住みやすいポジションが築けます。
しかし、そこを訴求ポイントと気づかなければ、とうぜんながらチグハグな訴求になっていまします。
2 お客様からよく依頼されること(値引き以外)はなんですか?
あるソフトメーカーでは顧客の依頼に応じてパッケージの会計ソフトのカスタマイズの問合せがよくきていていました。この会社はそういったお客様の要望に誠実に応えていました。
同社では自社でもパッケージソフト開発をおこなっており、どうやらソフトのカスタマイズは「本業ではない余分な仕事」と考えていたフシがありました。
実際にカスマイズした事例を見せていただくと実にきめ細かな対応をしています。裏返せば、既成のパッケージソフトでは対応できない「会社独自の会計処理」がたくさん存在しているということです。
同社ではソフト開発とともに特殊な分野の会計処理の知識をもっており、そのためきめ細かな対応が行えたのです。
しかし「本業ではない余分な仕事」と思っているくらいですから、そのことが自社の強みとは思っておらず、当然ながらWebにもその他の販促物にもそのことは訴求されていませんでした。機会ロスがあったかもしれず、もったいないことでした。
3 アンケートや営業パーソンがお客様から感謝される言葉なんですか?
包装資材の卸の会社の話です。
今の社長が3代目。初代からお客様の要望に応じてさまざまな商材を扱ってきました。
ただ、商材の種類が膨大となり、現社長は売れ筋の商材に絞り込もうといういうことになりました。
ただ、営業部から反対の声があがりました。
「『Aさん(会社名)においてなければしょうがない』と言われるように、うちは包装資材の品揃えにおいて最後の砦になっている。豊富な品ぞろえがうちの信頼にもつながっているので、商品品揃えの見直しは再考してほしい」とのことでした。
三代目の社長はお客様にも確認し「他社で扱っていない豊富な品揃えをもっていることが、うちの強みであり顧客のロイヤリティにつながっている」と判断し、商材の絞込を中止しました。
現在ではその幅広い品揃えを同社の訴求ポイントとしています。
3 販促物作成の前に、自社の訴求ポイントの確認を
いくつかの事例を上げて,訴求ポイントの作り方について考えてみました。
企業のホームページを更新する際にはデザインやSEOを考えるまえに、ぜひ、「自社の強みでターゲットの抱える問題をどのように解消するか」という視点で考えてみてください。
商品は下のように4つの分類ができると思います。
マーケティングや販路開拓のお手伝いをしていると、「顧客に十分良さが伝わっていないがゆえに売れていない」という商品がかなりあります。
弊社でもなんとかこういう機会ロスを減らしていくお手伝いができればと思っています。

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