マーケティング:売れる「商品・サービス」開発は軸をずらして考えてみる

1 市場にない便利な商品・サービスは売れるのか?

「今まで市場に存在しない『ものすごく便利な商品・サービス』は売れるのか?」と考えたとき、私の答えはNOです。少なくとも中小企業がとるべき製品・サービス開発戦略ではないと思っています。
なぜなら、その商品の価値を顧客は知らないので、企業は普及啓蒙して行かなくてはならないからです。当然そのために時間とコストが必要となります。
じゃぁ、みんなが知っているような商品・サービスで良いかといえば、これは競争が激しく、必要な利益が確保できない可能性も出てきます。

もう15年以上前の話になるのですが、福岡市役所の仕事でラーメン「一風堂」の河原社長(当時)にインタビューしたことがありました。ちょうどテレビ東京の「TVチャンピオン ラーメン選手権」で優勝したあとくらいでした。まだ、海外展開などはしておらず、少し全国的に知名度が高まってきた頃だっと思います。

やはり迫力ある方でした。何回も「お忙しいところすみません」とへりくだっていたら、「忙しゅうなか!(いそがしくない)」と一喝されたのも良い思い出です。

閑話休題。

「一風堂のようなラーメン店を作ろうと思った理由はなんですか」と質問しました。
河原氏はもともと、中洲で「アフター・ザ・レイン」という食事もできるバーを経営されていたとのこと。そのお店は女性のお客様が多く、そのお客様方からよく「女性が1人で入れるようなラーメン屋さんがないのよね」といわれていたそうです。
「じゃぁ、オレが作ってやる」といって、作ったのが今の一風堂のおおもとのコンセプトだそうです。

確かにひと昔前のラーメン屋さんというのは、ちょっと衛生的にどうかなぁと思うお店も数多くありました。

そこに女性をターゲットとし、「女性が1人で入れるラーメン屋」とした時点で、従来のラーメン店と差異化でき、客単価の高い店舗ができあがりました。もちろん、このビジネスの核となる「ラーメンがおいしい」と言うのは大前提ですが。

ラーメン屋さんというのは誰でもイメージできます。そこに、「女性」という軸を用意し、通常のラーメン屋さんとは違う軸で勝負していく。これが私のいうところの「軸をずらす」という意味です。

全くあたらしい商品や・サービスにくらべ、普及啓蒙に要するコスト・時間が削減されますから、中小企業がまず考えるべき視点だと思います。

2 軸をずらす視点

軸をずらす視点としては以下の様なものがあります。
1 限定する→一風堂がやられたようにターゲットを女性に絞ったり、一人用のカラオケボックスなどもこれに該当すると思います。ターゲットや用途を限定することで新しい価値や差異化要件が生まれることがあります。

2 使う場所を変えてみる→実際にお手伝いした例ですが、鹿児島に「洗畳」という洗える畳を開発した会社があります。和室自体が減少している中、介護施設や宿泊施設の浴室に敷きませんかと提案しています。これも従来の「和室・日本間・敷くもの」という概念から、「滑り止め・転倒防止」という利用の概念の軸をずらした商品開発といえます。

3 使う時間を変えてみる→これは実際にお会いしたことがなく、テレビで見たものなのですが、兵庫県にTTNコーポレーションという会社があります。こちらも畳屋さんなのですが、24時間営業をウリにしています。「夜中に畳を張り替える需要なんてあるのか」と思いますが、営業終了後の飲食店など、「夜中じゃなきゃムリ」という業種も多くあることは事実です。こちらも従来の畳屋さんの概念から、「深夜のはりかえ」という利用機会の軸をずらしたものといえます。

4 シチュエーションを変えてみる→これはメルシャンワインがとった戦略です。バブル全盛時には「ハレの日の飲み物」だったワインですが、バブル崩壊後はそうもいっていられません。そこで、毎日の食卓の飲み物という飲む場面を変更していきました。コンビニエンスストアでワインを見かけるようになったのもそのためです。

この他にも順序を逆にしてみたりなど、変化の視点はいくつかあります。
そんなとき、オズボーンのチェックリストを利用してみてはいかがでしょう。

3 オズボーンのチェックリスト

ブレーンストーミングを開発したアレックス・オズボーンが考案したチェックリストです。
9つの切り口で発想をしてみます。

転用できないか

似たものを探してみる。ヨーグルトと糠など「発酵」というキーワーでくくれるなら、転用が可能かも。

応用できないか

「別のものに活用できないか」という視点。爆薬がエアバッグに応用された例など。

変更できないか

見た目や色を変えてみるのもアイデアの一つ。

拡大できないか

新機能搭載、新成分の配合や濃度をアップすることで新しいアイデアに結び付ける。

縮小できないか

既存の製品から機能を取り去ったり、大きさをコンパクトにすることも新しい付加価値をプラスする。

手のひらサイズ・カロリーオフなど

代用できないか

卵の代わりに豆乳を使って→「豆まよ」の開発

置き換えられないか

原因と結果を入れ替えてみる。たとえば「火が燃えて二酸化炭素が発生し火が消える。→燃えている火に二酸化炭素をかけて消す」など

逆転できないか

昼と夜を逆転してみる。縦のものを横にするなど、固定観念の打破が必要。

結合できないか

シャチハタの印鑑や消しゴムつき鉛筆など、複数のものを組み合わせて新しい機能を訴求する。

新規創業をお考えの方などは、既存事業の違いを見つけるヒントにもなると思います。

 

 

 

 

 

 

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