政策形成基礎研修 自治体のデータを使って政策を考える

山口県にて主任級の方々と、主任主事級の方々への政策形成基礎研修を行ってきました。前者は1日研修、後者は2日研修でした。
ここでは、1日研修のカリキュラムを説明いたします。

研修の構成は以下のとおりです。

  1. 政策形成が必要な理由
  2. 2つのタイプの問題とアプローチ
  3. 考えるツールの提供
  4. 総合演習

という構成です。

1 政策形成が必要な理由

 

 

1 政策形成が必要な理由

少子高齢化に代表されるように、自治体を取り巻く環境も大きく変化しています。これまでの経験則の延長線では通用しない問題が数多く発生しています。
政策とは、自治体が抱える問題の解決策です。
今自治体職員が政策形成力を強化しなければならない理由は以下の2つです。

  1. 政策は地域の実情に沿ったものが求められる:地域の抱える問題は地域格差やその他の事情により異なります。地域の実情を一番把握している地域の自治体職員が政策を作ることが、地域の事情に適うことになります。
  2. さまざまな人への説明責任が生じる:政策を実行にうつすまでには、住民・議会・行政組織内など様々なところに説明責任が生じ、明確な問題意識や十分に論理構築された政策づくりが要求される。

 

2 政策形成時の留意点

また、政策形成にあたっては、

  1. 方針→枠組み→施策→事業とマクロからミクロへとおろしていくこと。
  2. 上位方針・法令・予算と行った制約条件も考慮すること。

上記2点を考慮しながら策定を進めていくことが大切です。

 

2 2つの問題のタイプとアプローチ

1 問題の2つのタイプ

「問題とは現状とあるべき姿の差」です。問題には2つあり、1つは誰もが「問題である」と認識できる問題(認識型)。交通渋滞やごみ問題などがこれにあたります。もう一つは現状まだ不具合は見えていないが、今後不具合が発生することが予見される問題(探索型)。環境問題や人口問題などがこれにあたります。

2 2つの問題のアプローチ

認識型の問題は住民も問題を認識しており、早急な解決を求めます。一方、探索型の問題は住民に問題を理解してもらうところから始める必要があります。

認識型の問題はまず解決した姿があるべき姿になります。不具合は感覚的なものでなく、極力数字など客観的に共有できる情報に置き換えましょう。その不具合の原因除去を考えていくのが政策の核となります。
一方で探索型の問題の場合は、まず「あるべき姿」を設定したほうが考えやすいと思います。
このときに活用するのが「ベンチマーク」という手法です。

ベンチマークとは他自治体や民間事例などの優れた実践事例などベストプラクティスともいいます。
要は「お手本」を探してきて、それをモデルと考え、現在の自分たちとの違いを分析し、「あるべき姿」に到達するために何をするべきかを考えていくアプローチ手法です。 

3 考えるツールの提供

 

ここではデータの見方、MECEと図式化、フレームワーク等について研修を行いました。
ここではデータの見方について紹介をいたします。

1 データを見るときの留意点

  1.  グラフ化して考える
  2.  背景を考える

1 グラフ化して考える

データ、とくに数字データを扱う場合はグラフなど視覚化してみることが大切です。
下は訪日外国人数と山口県訪問外国人の表とグラフです。感覚的に理解しやすいのはどちらでしょうか。

グラフにしたほうが訪日外国人数の比較や「いつから伸びが大きくなったのか」などが感覚的にとらえられるのではないでしょうか。

2 背景を考える

データを見ていくときに知っておいていただきたいのは、「データは結果は教えてくれるが結論を教えてくれえるものではない」ということです。

下のグラフを見てください。

平成27年に外国人宿泊者数が急激に伸びています。
ここで、「なぜ急激に伸びたんだろう」と考えることが大切です。
どんなイベントがあったのか?どんな会議があったのか?などなどです。
山口県はこの年「第23回世界スカウトジャンボリー」がありました。これで急激な伸びの理由もわかりました。

研修では28年は高止まったが、29年以降は激増、微増、横ばい、微減、激減のうちいずれになるかの仮説を考えてもらいました。もちろん正解があるわけではありません。データからどう考えて結論をだしたかが重要なのです。

2 データをみる視点

データをみる視点としては以下の点に着目する必要があります。

  1. 比較
  2. 割合
  3. 共通・相反

1 比較

全体と部分、今年と過年度など比較をすることで問題点が見えてくることもあります。

上のグラフは日本全体の訪問外国人数と山口県を訪問した外国人数。
日本全体と山口県の外国人訪問客数の傾向は一致していますね。2015-16年は日本全国の傾向を凌駕しています。
これを見ると山口県は順調に外国人訪問客を伸ばしていると言えます。

2 割合

数字をみていく際には、「実数」と「比率」の両方から見ていきましょう。比率をみることで、実数だけではつかめない課題が見えます。

 

上のグラフは山口県訪問外国人数と県内宿泊率の推移。これを見ると県内を訪れる外国人数は順調に増えていますが、宿泊率は下がっています。どこに問題があるのでしょうか?ハードの問題?ソフトの問題?
データをキッカケに問題の本質に迫っていきましょう。

3 共通・相反

上は5年間の小売業売上の推移です。さて、この4つの業種を2つに区分するとどういうグループとどういうグループに分かれるでしょう?またそれぞれのグループの特長は何でしょうか。
これは論理構築では帰納法に属するものです。一度考えてみてください。(研修ではもちろん答えております)

アリストテレスの「人を動かす三要素」「論理」「情熱」「信頼性」です。
企画をつくり、人に納得し動いてもらうためにもデータから考える習慣はぜひとも必要です。

4 総合演習

研修では「えるぼし認定取得率から問題を考える」ということで、えるぼし認定取得率をテーマに考えていただきました。「えるぼし」とは下記のようなものです。

女性活躍推進法に基づき、301人以上を雇用する事業主は一般事業主行動計画の策定・届出が義務化された。(平成28年4月1日より)300人以下の企業は努力義務となる。

行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な企業 は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の「えるぼしマーク」の認定を受けることができる。「認定の優遇措置としては、1 公共調達における加点評価 、2 日本政策金融公庫による低利融資などがある。

「えるぼし」取得企業数や取得率など5項目の資料から、山口県の対応は「問題ある」と考えるのか「問題ない」と考えるか検討していただきます。
どちらの結論でも正解です。問題はなぜそう考えたのかという理由の整合性にあります。

このほか、山口県の農業データと農業白書データから山口県の農業に関する問題を考えていただきました。

今回の研修のテーマは「データから考える」ということ。

それぞれの自治体のデータから政策形成基礎講座を構築いたします。

ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせください。

 

 

 

 

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