目次
1 論理なき結論は空疎。発想なき結論はワクワクしない。
タイトルの『ビジネスは「サイエンス」と「アート」である』という言葉は誰が言ったのか、どの本が原典なのかわからないのですが好きな言葉です。
私なりに解釈すると「ビジネスにおいては数字の分析やその結果から結論を導く論理的思考法とその論理的な結論をベースにした大胆な発想が必要」ということではないかと思います。
確かに論理のベースがなく思いつきのアイデアは空疎で説得力を欠きます。一方で、論理的な分析だけで結論を終えてしまうと、人をワクワクさせてくれない面白みのない主張で終わってしまいます。
「ビジネスでは論理をベースにした大胆な発想が求められる」ということなのでしょうが、研修を担当しているとなかなか両立している例は少ないようです。
会議などで、「部下の結論がどの事象から結びついてその結論を出したのかわからない」「数字の説明だけで終わって、その先の発想がない」などといったことを感じたことはないでしょうか。
ちょっとここで論理構築の視点、発想の視点について紹介したいと思います。
2 論理構築の2つの方法
論理構築には2つの方法があります。
- 演繹法
- 帰納法
1 演繹法
演繹法とはまず「前提」があり、そこに「事実・観察」が加わり、「結論」を導き出すというものです。
たとえば、
(前 提) 気温が17度を下回ると、コンビニの「おでん」がよく売れる。
(事実・観察) 明日は天気予報では、気温17度を下回ると言っている。
(結 論) 明日はコンビニの「おでん」がよく売れるだろう。
三段論法の例としてよく用いられる例も演繹法です。
(前 提) 動物は必ず死ぬ。
(事実・観察) 人間は動物である。
(結 論) ゆえに動物は必ず死ぬ。
演繹法の場合、前提が間違っていると結論も間違っていることになります。
2 帰納法
帰納法はいくつかの「事実・観察事項」から結論を導き出すというものです。
(事 実1) 10月10日 気温17度でコンビニの「おでん」がよく売れた。
(事 実2) 10月20日 気温17度でコンビニの「おでん」がよく売れた。
(事 実3) 10月30日 気温17度でコンビニの「おでん」がよく売れた。
(結 論) 気温が17度を下回るとコンビニの「おでん」がよく売れる。
帰納法の場合は事実の数と結論との関連性が説得力につながります。
演繹法・帰納法と書くと難しそうですが、ビジネスでは両方を使っていると思います。
例えばこんな感じです。
(事 実1)A社はインターンシップ制度を活用することで、
新入社員定着率を5ポイント向上させた。
(事 実2)B社は内定者に入社前アルバイトを推奨し、
新入社員定着率を2ポイントアップさせた。
(事 実3)C社は同社でのアルバイト経験者を積極的に採用し、
新入社員定着率を3ポイントアップさせた。
(結 論)入社前に、学生に仕事内容のほか会社の雰囲気や人間関係を知らせておくことは、
定着率の向上に役立つ。
ここまでは帰納法の論理展開です。今度はここででた結論が前提となり、演繹法での展開となります。
(前 提)入社前に、学生に仕事内容のほか会社の雰囲気や人間関係を知らせておくことは、
定着率の向上に役立つ。
(事実・観察)当社はここ三カ年新入社員定着率が1ポイントづつ悪化している。
(結 論)当社も入社前に会社の雰囲気や人間関係を知らしめる施策が必要である。
たとえば・・・。
データや事実から帰納法で結論を導き、その結論を前提として、問題への解決策を示していくという手順は聞き手に説得力を与えるものと思います。
3 発想の前提
発想の前提として以下のものがあげられると思います。
- ゼロベースで考える。
- 手持ちの情報で仮説を立てる。
1 ゼロベースで考える
弊社が福岡市から「中小企業グローバル人材育成事業」を受託し、全15回のセミナーを運営・プロデュースしたことがありました。その中で海外展開をしている企業の社長に体験談を語ってもらうコーナーがありました。
その際に講演をお願いしたのが大牟田の「石橋屋」の石橋社長でした。
「石橋屋」さんは明治十年創業の手作りこんにゃくの会社。社長は実にアイデアマンで、「こんにゃくを海外で売ろう」と海外を飛び回っております。
「こんにゃくを海外で売る」
これなんかは「ゼロベースの発想」の良い例だと思います。
「こんにゃくが海外で売れるはずがないだろう」というのはかんたんですが、国内市場が収縮する中、社長とすればなんとかしなくては行けない。「☓☓は無理」「☓☓なんかできるはずがない」と思った段階で思考停止に陥ってしまいます。
変化の激しい時代に、過去の経験だけで考えていては見誤ることもあります。一度過去の情報をリセットして考えていくことが大切だと思います。
2 手持ちの情報で仮説を作る
研修で「新幹線の博多東京間の距離は何キロかご存知ですか?」と訪ねます。
ほとんどの方は「知りません」と回答されます。まぁ、当然ですね。
そんなとき、ホワイトボードに「速さ☓時間=距離」と書き、さらに質問を続けます。
「新幹線の時速ってどれくらいでしょう?」
これも大体の方が「300キロぐらいですかねぇ」と答えます。正しい答えが必要ではないのです。大体みんなが「そんなもんだ」といえば、それが正解です。
つづけて「博多東京間って新幹線だとどれくらいの時間かかるでしょうか」と質問すると、だいたい「5時間くらい」という答えが返ってきます。
であれば「速さ 300km☓時間 5時間=距離 1500キロメートル」と一応の答えがでてきます。
こういう考え方が大切だと思うのです。人間すべての情報を持つことは不可能です。しかし、だからといって、安易に「知りません」「わかりません」ですませてしまうと思考停止に陥ってしまいます。
知らないながらも手持ちの情報で考えるという発想が大切だと思います。
発想する視点としての「軸をずらす視点 」「オズボーンのチェックリスト」についてはリンク先記事を参照してください。
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